「実際に見えている物のみを、いくら一生懸命見ていても、それ以上のものは見えない。見えていない部分も意識して見るようにしなければならない」私たちの仕事に伴う視覚的なアプローチ。いわゆるデザインに関わる人は、どこかのタイミングで必ずこのことを教えられます。
いえ、これは視覚的なものを扱う職業に限定された話ではないですよね。例えば言葉を扱うコピーライターにとっても同様に大切な事ですし、他の職業でも言われる事なのかもしれません。あるいは意識していないだけで、そのようなことは普段からやっている可能性もあります。これはアイデアやクリエイティビティを発揮しなければならない場面では必ず必要になるスキルかと思います。
視覚的な話で具体的に説明しますと 、例えば”地と図” の関係というものがあります。
ここに書かれているこの文字自体が図であり、その背景というか周りを囲んでいる白い部分が地です。図である文字を文字として認識する為には地である白いスペースがなければなりません。同様に図として何かのビジュアルを成立させるためには地になるものをきちんと制御しないといけないという訳です。
前述したように、このような関係は、なにもビジュアルに関する事だけに当てはまる話ではありません。
例えばコピーならば ”何を言うか?” と同時に ”何を言わないか?” が大切になります。
会社や製品のポジショニングにおいては "どの様に見られたいか?" だけではなく ”どの様に見られたくないか?” という面がありますし、販売促進の企画であれば、ターゲットに ”どういう行動を起こして欲しいのか?” と同時に ”どういう行動を起こして欲しくないのか?” といったことも、この ”地と図” の関係に当てはまります。
殆どのものは、この ”地と図” の関係によって成り立っていますよね?ですから ”地” になっている部分をちゃんと把握出来ないと本当の意味で ”図” を描き出すことなんて出来ないのです。何の分野であれ ”地" をちゃんと認識し制御出来てはじめて ”図” となる部分を産み出せるという事なんです。
新しく何かを産み出す為のオリエンの場であれば、知らなければならない、引き出さなければならない部分は、その見えてない ”地” になっている部分です。
なぜ、そのような ”図” つまり、希望や説明が、そのオリエンの場で言われているのか?というところが大切になる訳ですよね。
普段から、この見えにくい ”地” の部分を意識して見るようにする事によって、それまでも「充分に見えている」と思っていたものが、まったく違って見えてくるというような事があると思います。それこそが、ものを産み出す作業の第一歩だということです。
さて試しに、今、あなたの会社や、あなたがやろうとしているプロジェクトは「こうなりたい」「こうやっていこう」という目標や指針があります。では、「こうなってはいけない」「こういうことは、やってはダメだ」という明確な地の部分は何か考えてみてください。