私たちの職業では、ビジュアルやコピーなどで表現したメッセージの意図や狙いを、発注者であるお客様に説明し、了解を得て、実際の制作物の制作に入ります。
ただし、全てにおいてそのプロセスが必要か?というと、比較的単純な戦略のものの中には説明しなくてもよいもの、つまり説明が無くても充分に理解を得る事が出来るのもある事はあります。私の元上司が「メッセージに触れるターゲットや生活者は何の補足説明も無くこれを見る事になるんだから、もし説明しなければ分らない様なものだったら、それはメッセージとして機能していないってことなんだよ」と言っていた事は良い助言として今でも常に思い出しながらやっています。
”分りやすさ” ”伝わる事” (つまり単純である事ではなく、発信者として意図した通りにメッセージを伝える事が出来ているという事)は、優先順位として当然、最上位に来るものですし。
しかし、少し複雑な仕組みの企画などでは、生活者がどこで最初にそのブランドに触れ、そこでどんなメッセージを受け取り、次のステージではどうなる事が想定され、最終的にどんなアクションを起こして欲しいと期待しているのか?といった ”ストーリー” と、その、それぞれの場面に対し、提案している表現がどうリンクし、どう機能する様に設計されたものなのかは、やはり説明しないと、なかなか理解してもらえないものですから、実際に提案の席でその表現案に関して説明せず黙って見せるだけというのは、なかなかありません。
提案している担当者の方に、実際の場所、実際の時系列での情報への接触を、そのまま体験してもらえる訳ではないですからね。想像による疑似体験を頭の中で行ってもらう為には、どうしても前提や狙いなどの説明をする必要が出てきますよね。
ところで、上記の様なものは、”説明する” のが正しいんでしょうか?それとも ”説得する” のが正しいんでしょうか?
”説得する” というのは、私は個人的にはあまり好きな言葉ではありません。それに人間には元々他人から ”説得” されて決断するというのを好まない傾向があるという事も聞きます。要はどんな場面であれ「自分で決定して行動したい」と感じているらしいのです。
じゃあ、やっぱり ”説明” なのでしょうか?
悪くはないのですが、 ”説明” だとなんとなくあっさりしすぎていて機械的すぎる感じがしてしまいます。
私はこのような場合、いつも ”伝える” ようにしようと心がけています。
これら ”説明する” ”説得する” ”伝える” は、それぞれ違うものなのですよね。 ”商品の良さを説明する” のと、”商品の良さを説得する” 、そして ”商品の良さを伝える” と例を挙げると更にわかりやすいと思います。
”説明する” ”説得する” は、一方的になりがちですが、”伝える” は、伝わった相手がいて成り立ちます。私たちは相手に対し、その良さを、意図を、そして熱意を伝えるというのが正しいんじゃないかと思うんですよね。
”伝える” のは、形式や型、テクニックではないと思っています。一番大切なのは、常に相手がいるという事を意識する事、そして次に熱意なのではないでしょうか。
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