4月 25, 2012

それは対立しているか?それは本当に理由なのか?


とにかく何でも良いから、たとえ勘違いされた結果でも良いから商品が売れれば良い。
仕事の依頼を受ける際、このような感じの話になる場面があります。もちろん全ての場合において、このように露骨に要求が口に出される訳ではなく「言っている事の意味合いからするとそうだ」となる場合の方が多いのですが。

”背に腹はかえられない”事や、食べるものも無いのに建前や奇麗事でしかないと捉えられがちな "考え方" や "ポリシー" について、どうのこうのなんて言ってられないという気持ちになるのは分らなくはありません。これまで全く売れず、このままでは大赤字になりそうな商品が、今なら、10%安くするだけで間違いなく売れると分っている状況であれば「自分たちは◯◯だから絶対に割引はしない」などとは言ってられないのが本音でしょう。実際にそのような都合の良いシチュエーションはなかなか無いにしても、追いつめられた売る方の心理としては、いつも、そう思ってしまうでしょうし。

でも、モノを売る事と、自分たちの "考え方" や "ポリシー" を貫く事って、本当に対立したものなのでしょうか?確かにアートとかロックバンドの世界とかでもよく聞きますよね。「あいつは商業主義だ」とか(笑)。「プライドで飯は食えん」とかっていう言葉も、何となくちょっと似ているかも知れません。
もちろんそれぞれの内容によるんでしょうけど、どうも "モノを売る” 事に対する "考え方" や "ポリシー" といったものの旗色は大方の場合悪そうです。

ちなみに、ここで言う "考え方" や "ポリシー" というのは、お金儲け以外(逆に利益を上げなければならないといった事は当たり前の話ですもんね)の、目標やあるべきと考えている姿の事ですので、前述したように建前や奇麗事と捉えられがちなのもしょうがないかもしれません。 企業の目的なんて、本来、売り上げや利益を上げる事にしか無いはずで、その利益を大きくする為にしている、あまり褒められない事や後ろめたい事を誤摩化す為、生活者を騙す為に綺麗なお題目を掲げているだけでしかない、という訳ですね。

この事は実際にはどうなのか?という事は、このテーマからずれるので、これ以上は書きませんが、ただのお題目にしないよう行動をしている企業はもちろん有るでしょう。 でも、もしどこかが開き直って「私たちは何でもいいから売れれば良いと思っています」というメッセージを発信していたら、そのような企業からは何も買いたくはならないですよね?当然です。ですから「これは便利ですよ」とか「お得ですよ」とか?別のアプローチでメッセージしているわけです。

ところが、これらは、今や数ある商品やサービスの洪水の中で、特に競合との差別化になる ”便利” や ”お得” ではなくなって来ている場合が多く、その状態が何を生むかというと、先ほどの例にも出した ”値下げ合戦” と「何でも良いから、とにかく目立とう」という様な、販促の方向性なんです。

それにも限界があります。極端な値下げに伴うコストダウンを行いながら、本当の意味でそれまでと同様の品質を保つという事は殆どの場合あり得ません。見えない部分で必ず何かを削っているはずですよね。
品質やサービスへの影響が出れば顧客はそれを絶対に見逃さないでしょう。そしてそれが気に入らなければ二度とその商品には戻ってこない可能性もありますよね。

この値下げ合戦に巻き込まれる状態というのも「とにかく今だけ」という考え方と同じ。それこそ ”今” 売れれば何でも良い訳です。

 ”今” 売れれば何でも良い、とにかく目立てば良いという、その場限りのメッセージは、その発信者とあまりリンクしないものになりがちです。それを見た方は、その瞬間は面白くてそれを憶えていたり友達と話題にするかもしれませんが、その情報なんて新しくなくなったり、飽きたりした時点で忘れてしまいます。その後、何かの拍子に思い出したとして企業名や商品名も一緒に思い出してもらえるものがどのくらいあるでしょうか。よほど大量にテレビコマーシャルなどで露出したものじゃないと思い出せないのではないでしょうか。

”今” が大事と言いますが、では、”今” ってなんでしょうか。過去から繋がって到達しているものですよね?未来も ”今” が積み重なって到達するところではないのでしょうか? ”今” だけという事でやった事は、そのまま次の ”今” にも影響する訳です。結局は、その ”今” が、ずっと連続して続くことで信用を失い、力を失い、魅力を失ってしまうのではないでしょうか? ”今” やらないからいつまでも、そういう ”今” が続くんじゃないでしょうか。

ちなみに私は "モノを売る” 事と企業の "考え方" や "ポリシー" といったものを伝えるブランディングの意識は対立するものとは考えてません。逆に背景に企業の "考え方" や "ポリシー" がちゃんと敷かれた上で、驚きのある、面白い、売れるプロモーションは成立すると考えています。
というか、そもそも毎回そのとき限りで、次も同じようにお金と労力をかけてやらなければならないのでは無駄も多いですし、何より資金が潤沢にある企業じゃないと出来ませんもんね。

さて話がちょっと飛びますが、こだわりのカフェや飲食店なんかは、どちらかというとその ”考え方やポリシー” で、その場限りじゃないその店のファンを惹き付けてますよね?その方式をとったところが悉く上手く行かずに潰れているのか?といったらそうではないです。

であれば、そのやり方で上手く行かず潰れてしまったのは、その ”考え方やポリシー” を貫くというやり方がまずかったんじゃなくて、何か他に原因がある可能性がありますよね。

プロモーションの話に戻すと例えば ”ブランドのあり方を背景にメッセージする” というやり方は間違っていなくて、単にその ”表現のされ方がまずかった” という事が原因である可能性もあるわけです。

1 件のコメント:

  1. ※私はお題目で良いから作ってメッセージに入れ込むべきだという事を主張している訳ではありません。念のために。
    実態が伴わない限りそれは嘘でしか有りませんし。

    そうではなく、先ずは実質的な意味で、売上や利益を上げるという事以外の目的を掲げポリシーとし、その上で全てのメッセージに、そのエッセンスを一貫性を持って貫かせた方が良いと考えています。

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